昨年、ダイビングのライセンスを取得している知り合いに声をかけ、1年前になんとなくのかけ声で始まった海好きによる関西素潜りサークル「うみうし部」。本格的な始動は10月のすさみ合宿であった。それ以降、様々な合宿を経験しつつ結束力を高め、2006年を見事に越冬した「うみうし部」は、ホームである日本海での始動を心待ちにしていた。はやく、あの懐かしい海で潜りたい。アジ、スズメダイ、イサキ、ベラ、ギンポ…カラフルな大平洋の魚たちと比べ、ダイビングのログ付けでも決して脚光を浴びることはないであろう、地味なアイツらは今どうしているのだろう??2007年5月26日。そして、時は来た。

舞鶴気象台の予報では水温16℃。前日の大雨により、過酷な海開きとなるであろうと誰もが覚悟をして出発。だが、小浜方面へ向かう367号線はそんな不安をかき消してくれた。マイナスイオンたっぷり。およそ10ヶ月ぶりの鯖街道だ。「この山道、懐かしい!いい感じだぜ!」と国道でテンションが上がっているのは、MAYUひとりだけであったが…

プラントとは北陸地区を中心に展開している巨大スーパーである。ありとあやゆる物資がこの1店舗に集中しているので地元客だけでなく、シーズンになるとレジャー目的の観光客がわんさかやっくる。この店に置いていないモノはない。加えてビックリの価格体。消費者の味方であることは言うまでもない。ぜひ、関西地区にも拡大して頂きたい名店だ。
このプラント、私の過去の経験から言わせると、物資の豊富さが一種のテーマパークを連想させ、初心者なら必ず興奮状態に陥るという現象が起きている。結果、プラントの滞在時間が長くなり、毎度毎度予定時刻を大幅にオーバーしてしま
うのだが、今回も予想通り初参加のパパラッチくんのテンンションがUP。気がつけば彼はハンドグリップを購入していた。潜りに関係ないじゃん!
小一時間ほどプラントを堪能しつつ食材を調達し、一路常神半島へ向う。トンネルを抜ければそこは田烏海岸。さらに山道に入り、三方五湖を通過すれば…
到着!あぁ懐かしや、塩坂越。今年もお世話になります。
波は高めの1メートル強。風も強い。大平洋とは違った荒々しさに、日本海の厳しさがうかがえる。プラントにて上がったテンションも失速気味。どうしたうみうし部!
簡易キッチンを作り、
とりあえずは腹ごしらえということになった。

昼食メニュー。
●カニとトマトのパスタ
●フランスパン
●生ハムとチーズ
●シャンパン(パパラッチくん提供)
●塩さば
●そら豆
(後半は和食になったが気にしない!)

体があったまってきたところで、海開き開始。日本酒を忘れたのでシャンパンで安全を祈願した。

潮が引き始めたのを見計らい、特攻隊長NAKAくんが今年初のエントリー。気になっていたいた水温も19〜21℃だ。5ミリウエットなら問題ないといったところである。どこぞの家族が、のどかに浜辺遊びに勤しむ隣で必死にジャックナイフを繰り返すNAKAくん。「ママーあのひと恐いよ〜」「見ちゃだめ!」という会話が聞こえてきそうである。

岸へあがってきたNAKAくんに、海の中の様子はどうだった?と訊くと、「草ぼーぼー!」とのこと。ホンダワラか。この時期である。これしきのこともちろん想定の範囲内。いざと言う時にナイフを身に付けていけば、問題ないでしょう、と楽観視していた私たちだったが、ここは日本海。予想を上回る強敵が存在していたのである。

ビーチエントリーして数メートル。さすがにこの時期のホンダワラはすごい。ところどころアメフラシの卵も垣間見える。ホンダワラの隙間をぬって潜ってみると、その植物の大きさがハンパではないということがわかる。スズメダイも数匹単位だが群れは健在だ。アジは少なめ。

水面移動中、水面に半透明で卵のような物体が漂っていることに気付く。「クラゲか?」さほど気にせず沖へぐんぐん泳いでいくと、その透明の親玉であろうか。数珠つなぎの透明がちらほらと水中を漂っている。水面にただよっているのは死んだ卵だろうか??目指すは塩坂越の名物であるプチ洞くつ。だが、卵が気持ち悪くて先へ進めない。特攻隊長NAKAくんが「戻ろう」と言い出した。波があるので、アジコバさんが波酔いしている。結局、1ダイブ目は白い存在に行く手を阻まれ、目的地まで辿りつけなかった。





岸へ戻り、あの白い物体はなんだ??という論議が交わされた。クラゲか植物の一種であろうか。5月に潜ったのは初めてだが、こんな海も初めてだ。さすが日本海。人間に…いや、生理的にも厳しすぎる!

そら豆と塩さばをつまみつつとりあえずは休憩。そら豆うめぇなぁ〜。最高だ〜。と、春の味覚と海を堪能していると、遠くにノラ犬が現れた。柴犬だろうか。柴といえば、「ジョン」という名前が妥当なところであろう。過去、MAYUのじいちゃんが飼っていた柴犬も、オス、メスに関わらずジョンであった。異論を唱える者もなく、彼(彼女)の名前はジョンに決定していた。不安そうにこちらを見つめるジョン。エサをねだるわけでもなく、何か言いたげだ。もしかして私たちが占領している浜辺の一体が気になって仕方ないのでは…?
2ダイブ目は満潮時。サザエの生態チェックである。だが、先程と違って様子がおかしい。透明卵が増えている!!干潮と満潮の反動で、沖に漂っていた白い数珠卵が大量に湾内に流れ込んできていたのである!もちろん水面の固体卵も量産されている。サザエどころの騒ぎではない。時折、手や顔にあたる、ふにゃりとした感覚も堪え難い。フードはしていない。髪の毛は透明のゼラチンでねばねばしている。もうこれ以上は限界だ(生理的に…)。撤収しよう。私たちは完敗した。

岸へ上がり、沖を振り返ると日が暮れかけている。水中では、「ヒヨっコのお前らが来るところではない」と言わんばかりの厳しさだったのに、水面はこんなにも穏やかだ。まるで、「またしごいてやるから覚悟して遊びに来い」と、語りかけているかのよう。厳しくも優しい日本海。


また再来週来るからな!こうしてうみうし部2007年夏の陣は幕を開けたのである。




さきほど現れたジョン。荷物を撤収し、駐車場で温めておいたポンプシャワーで潮を流していると、私たちが居た浜辺の一体に戻って辺りをクンクンしている。そう、あそこはジョンのテリトリーだったのだ。「なにもされてないかな?」と言いたげにしきりと周辺をうろついてチェックしている。私たちがテリトリーを占領していたばっかりに、縄張り用のオシッコを我慢していたのだろう。悪かったな、ジョン。でもそのテリトリー、次も貸しておくれよ。つか、お前のテリトリー内にある岩場で、昼メシ作ったんだけど、そこではオシッコしてないだろうな…?

帰路の途中にある梅の湯で汗を流した。ここの小じんまりとしたお風呂が気に入って、去年から利用させてもらっている。手ぬぐいとバスタオル付で500円だ。梅ビールはさっぱりとしていて最高だ。車を運転しない方はぜひ飲んでもらいたい。
京都へ戻り、恒例の王将タイム。餃子6人前を頂き解散した。
参加者:MAYU、アジコバ、パパラッチ、NAKA
写真:パパラッチ、MAYU

透明度:3〜5m
水温:19〜21℃


おまけのおまけ。

悪寒たっぷりのあの透明卵。うみうし部が総力を上げて調査した結果、アジコバさんが情報をゲットしてくれた。奴は「モモイロサルパ」といって、クラゲの原種のようなものなのだそうだ。卵ではなく完全な成体であるということも判明している。

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